相続放棄の落とし穴

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相続放棄をしたい人がしてはいけないこと

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年06月20日

1 相続放棄が受理されないケース

 相続放棄は、家庭裁判所に必要な書類を提出するという手続きですが、一定の行為等があると受理されないことがあります。

 具体的には、熟慮期間の渡過と、法定単純承認事由に該当する行為があった場合、相続放棄は受理されません。

 相続放棄をしたい人は、これらのことをしてはいけないということになります。

 以下、詳しく説明します。

 

2 相続の開始を知った日から3か月以上経過させてしまうこと

 相続放棄は、相続の開始(被相続人が死亡したこと)を知った日から3か月以内に行う必要があります。

 この期間のことを「熟慮期間」といいます。

 具体的には、相続の開始を知った日から3か月以内に、相続放棄申述書と戸籍謄本等の必要な書類をそろえ、管轄の家庭裁判所に対して提出する必要があります。

 この期間を過ぎてしまうと、相続をする意思があるとみなされ、相続放棄をすることはできなくなってしまいます。

 なお、相続放棄の期限は、あくまでも「相続の開始を知った日」から3か月以内であり、相続の開始があった日(被相続人が死亡した日)から3か月以内ではありません。

 その理由は、被相続人が死亡してから、相続人が被相続人の死亡を知るまでにタイムラグが生じることがあるためです。

 例えば、何らかのご事情により家族と疎遠になっていた相続人の方においては、被相続人が死亡して1年近く経ってから、被相続人の債権者等から連絡を受けて初めて被相続人が死亡したことを知るということもあります。

 このような場合において、すでに相続放棄ができないとされると、相続人の方にとっては酷な結果となりますので、熟慮期間は「相続の開始を知った日」から3か月以内とされています。

 ただし、被相続人が死亡した日から3か月を経過した後に相続放棄申述書等を提出する場合には、被相続人が死亡したことを知った日からは3か月を経過していないということを、事情を知らない家庭裁判所に理解してもらうため、裏付けとなる資料等を家庭裁判所に提出することもあります。

 

3 法定単純承認事由に該当する行為を行ってしまった

 相続財産を廃棄したり、売却、費消等をすると、遺産を相続する意思があるとみなされ、相続放棄が受理されなくなる可能性があります。

 相続放棄をしたい場合には、これらの行為を行ってはいけません。

 これらの行為は、相続財産を取得する意思の表れ(法定単純承認事由)とされ、相続放棄をする意思がないとみなされるものです。

 具体的な例としては、被相続人の預貯金を引き出して自分のために使ってしまうことや、被相続人が所有していた不動産や車両の売却、被相続人が所有していた空き家等の建物を解体することが挙げられます。

 また、相続財産を取得する意思を表示する遺産分割協議も法定単純承認事由に該当する行為とされます。

 どこまでが法定単純承認事由に該当するのかは、ケースバイケースとなりますので、ご不安な方は弁護士へご相談ください。

相続放棄の期限

執筆者:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年07月01日

1 相続の開始を知った日から3か月以内(熟慮期間)

 相続放棄は、「相続の開始を知った日から3か月」以内に行うこととされています。

 この期間のことを、熟慮期間(相続財産・債務を相続すべきか、放棄すべきかを、しっかりと考えるための期間)と呼ぶことがあります。

 相続放棄をするためには、相続開始を知った日から3か月以内に、相続放棄申述書等の所定の書類を収集、作成し、管轄となる家庭裁判所に提出することが求められます。

 ここで一点留意すべきこととして、相続開始を知った日から3か月以内に、相続放棄のすべての手続きの完了までをしなければならないというわけではありません。

 

2 相続の開始を知った日とはいつか

 熟慮期間は相続の開始を知った日から3か月間であり、とても短いです。

 そのため、相続の開始を知った日がいつであるかは、非常に重要です。

 注目すべき点は、熟慮期間は、「相続の開始の日」(すなわち、被相続人がお亡くなりなられた日)から3か月ではなく、「相続の開始を知った日」から3か月とされている点です。

 一般的には、相続人は、被相続人がお亡くなりなられた日か、その数日以内には、被相続人の死亡を知ります。

 もっとも、何らかの事情によって、被相続人や他の相続人と疎遠である等の場合には、被相続人死亡の事実を長い間知り得ないということもあります。

 相続放棄の場面において多く見られるケースとしては、幼少期に両親が離婚し、それ以降片方の親とは音信不通になっていたが、被相続人が死亡してから1年以上経って、借金取りなどの連絡によって被相続人死亡の事実を知るというものがあります。

 もし、熟慮期間が「相続の開始から3か月」であったとしたら、相続放棄はできなくなってしまい、親の借金返済を免れることはできない、ということになってしまいます。

 これでは、相続人の立場からしたら、あまりにも酷です。

 そのため、「相続の開始を知った日」から3か月以内とされています。

 上述の例では、借金取りからの催告書等を読んで被相続人死亡の事実を知ったのであれば、その日から3か月以内に相続放棄申述書を裁判所に提出すればよいということになります。

 

3 提出先を調査することに時間がかかる場合もある

 熟慮期間内に相続放棄申述書等を管轄の家庭裁判所に提出することを目指した場合、実務上考慮すべき重要な点として、提出先となる家庭裁判所の調査に要する時間が挙げられます。

 管轄となる家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 ここでいう被相続人の最後の住所地とは、原則として被相続人の住民票除票または戸籍の附票に記載された住所のことをいいます。

 つまり、被相続人の住民票除票または戸籍の附票が取得できないと、相続放棄申述書等を提出する先の家庭裁判所が判明しません。

 提出先の家庭裁判所が、管轄の家庭裁判所であることを示す資料としても、被相続人の住民票除票または戸籍の附票を提出する必要があります。

 被相続人の住民票除票または戸籍の附票が取得できていない状態で熟慮期間が迫っている場合には注意が必要です。

 このような場合、緊急手段として別の裁判所に提出し、住民票除票または戸籍の附票が取得できた後に、本来の管轄の裁判所へ移送してもらうという手段を用いることもありますが、あくまでも裁判所の裁量により判断されますので、しっかりとした説明書面を提出するなどの対応が必要となります。

相続放棄での弁護士と司法書士の違い

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年10月03日

1 相続放棄手続きの代理人となれるかどうかの違い

 相続放棄手続きにおいて、弁護士と司法書士の根本的な違いは、家庭裁判所との関係において、代理人になれるか否かという点です。

 相続放棄手続きの代理人になれるのは弁護士のみであり、司法書士を含む他の士業の方は、あくまでも書類作成等の「代行」ができるのみとなります。

 この違いが、実務上どのような違いを生むのか、以下詳しく説明します。

 

2 家庭裁判所とのやり取り

 弁護士が相続放棄手続きの代理人になる場合、家庭裁判所へ提出する相続放棄申述書の申立人欄に「申立人 代理人弁護士 〇〇」というような形で記載されます。

 また、弁護士に相続放棄の代理を委任したことを示す委任状も添付します。

 これにより、家庭裁判所は、代理人弁護士がついていることを認識し、手続きについての問い合わせ等は、基本的に代理人弁護士に対して行うようになります。

 一方、司法書士等の場合、あくまで書類作成を代行しているにとどまりますので、申述人は相続放棄をする人本人となります。

 そのため、家庭裁判所は、手続きについての問い合わせ等は、申述人(相続放棄をする人)に直接連絡をします。

 家庭裁判所とのやり取りは、専門的な内容である場合もあるため、法律や相続放棄に詳しくない者が対応するのは大変です。

 代理人弁護士がついていれば、代わりに対応できるので安心です。

 

3 家庭裁判所からの質問状への対応

 相続放棄申述書を家庭裁判所に提出をすると、家庭裁判所から申述人に対して、質問状を送付することがあります。

 質問状を送付する趣旨として以下のものが考えられます。

 まず、法定単純承認事由(相続放棄が認められなくなる行為等)の有無の確認です。

 次に、なりすましや強要による相続放棄申述でないかを確認することです。

 質問状は、申述人に直接送付されることもあれば、代理人弁護士に対して送付されることもあります。

 申述人に送付された場合、代理人弁護士が回答内容をアドバイスし、申述人から回答をします。

 代理人弁護士に送付された場合、代理人弁護士が回答します。

 質問状は、回答の仕方によっては、相続放棄が認められなくなる可能性もあります。

 質問状への回答を弁護士に任せられる点や、ご自分に送付された場合でも適切な回答の仕方について弁護士に相談できる点もメリットかと思います。

 また、家庭裁判所によっては、代理人弁護士がついている場合には、質問状を送付しない運用をしていることもあります。

 代理人弁護士がつくことによって質問状への回答を回避できることがあるのは、大きなメリットとなります。

相続放棄にかかる期間

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年06月03日

1 相続放棄の期限

 相続放棄は、管轄の家庭裁判所に対し、相続放棄申述書と付属書類を提出することで開始されます。

 相続放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に、上述の書類を家庭裁判所に提出して受け付けてもらう必要があります。

 では、実際に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をするまで、どのくらいの期間を要するか、以下説明します。

2 相続放棄申述までにかかる期間

 まず、相続放棄申述書自体は、比較的簡素な書類であるため、作成にはそれほどの時間を要しません。

 一方、付属書類の中核をなすものとして、戸籍謄本類と、被相続人の住民票除票または戸籍の附票があります。

 被相続人が親である場合(子が相続放棄をする場合)は、被相続人の死亡の記載のある戸籍及び戸籍の附票と、相続人の現在の戸籍があれば良いので、1~2週間程度で収集できると考えられます。

 被相続人が子である場合(直系尊属が相続放棄をする場合)は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍及び戸籍の附票と、相続人の現在の戸籍が必要です。

 被相続人が複数の市町村等をまたがって転籍している場合、1か月~2か月程度の時間を要することもあります。

 被相続人が兄弟姉妹の場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍及び戸籍の附票と、相続人の現在の戸籍に加え、直系尊属の死亡の記載のある戸籍が必要となります。

そのため、直系尊属が相続放棄をする場合以上の期間が必要になることもあります。

 

3 相続放棄申述後にかかる期間

 相続放棄申述書等を家庭裁判所に提出すると、相続放棄を認めてよいか否かの審査が行われます。

 書類の不足等の不備がないか等の形式的な審査と、相続放棄の開始を知った日やその経緯、相続放棄の理由等の審査を行います。

 書類に不備がある場合、取得して家庭裁判所に追完します。

 追完する書類にもよりますが、戸籍謄本類等であれば、一般的には1~2週間で追完可能であると考えられます。

 その後、家庭裁判所によっては、申述人(相続放棄をする相続人)に対し、質問状を送付します。

 質問状を送る目的は、申述人の真意に基づいて相続放棄の申述を行っているか(なりすましや強要でないか)、及び相続放棄が認められなくなる事由(法定単純承認事由)がないかを確認することにあります。

 質問状に回答を記載して家庭裁判所に返送するまでの期間は、概ね1~2週間程度です。

 その後、特に問題がなければ、一般的にはさらに1~2週間程度で、相続放棄申述受理通知書が発行され、相続放棄手続きが完了します。

相続放棄について弁護士に依頼するメリット

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年05月08日

1 弁護士と相続放棄手続き

 相続放棄は、管轄の家庭裁判所に対し、相続放棄申述書と付属書類を提出することで開始される手続きです。

 そして、家庭裁判所が、申述人(相続放棄を希望する相続人)の事情等を審査し、相続放棄を認めることが相当であると判断した場合、相続放棄が実現します。

 相続放棄は、裁判手続きであることから、弁護士だけが代理人になることができます。

 他の法律の専門家の場合、相続放棄の書類等の作成を代行することはできますが、手続きの代理をすることはできません。

 形式的には、相続放棄申述書を、申述人本人の名義で作成するか、代理人の名義で作成するか、という違いが生じます。

 そして、この違いが、その後の手続きにおける、申述人本人の負担に大きな影響を及ぼします。

 以下、詳しく説明します。

 

2 家庭裁判所からの連絡に対する対応

 相続放棄申述書等を家庭裁判所に提出した後、家庭裁判所から、問い合わせの連絡が入ることがあります。

 相続放棄申述書が申述人本人の名義で作成されている場合、たとえ法律の専門家が相続放棄申述書の作成を代行していたとしても、申述人本人に連絡がくる形になります。

 一方、相続放棄申述書が代理人弁護士の名義で作成されている場合、原則として代理人弁護士の方へ連絡がなされます。

 家庭裁判所からの問い合わせは、専門的な内容のものであることもあり、回答の仕方次第では相続放棄の結果に影響を及ぼすため、代理人弁護士が回答した方が安全です。

 相続放棄を弁護士に依頼すれば、代理人として対応してもらえるため、相続放棄手続きを適切に進めることができます。

 

3 家庭裁判所からの照会書

 あまり知られていないことかもしれませんが、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所から質問状(照会書)が送られてくることがあり、回答を求められます。

 照会書を送る趣旨は、他者によるなりすましの防止と、法定単純承認事由の有無の確認です。

 回答の内容次第では、相続放棄が認められなくなる可能性もあるため、慎重な対応が必要になります。

 しかし、家庭裁判所によっては、弁護士が手続きの代理をしている場合、照会書を送らないという運用をしています。

 そのような裁判所であれば、弁護士に相続放棄を依頼していれば、照会書が送られてくることがないため、照会書の回答の内容次第で相続放棄が認められなくなるというリスクをゼロにできます。

 また、代理人弁護士に照会書を送付するという運用をしている裁判所もあります。

 この場合、法律の専門家である弁護士が回答できますので、安心です。

相続放棄に強い弁護士に依頼した方がよい理由

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年03月01日

1 相続放棄手続きと効果

 相続放棄は、相続放棄申述受理通知書等、所定の書類を揃え、管轄の家庭裁判所へ提出し、家庭裁判所が相続放棄を認めることで成立する手続きです。

 相続放棄の手続きの特色として、相続放棄の申述ができる期間がとても短く、相続の開始を知った日から3か月以内であること、もし認められなかった場合、覆すことは非常に困難であるため、ほぼ一発勝負であることが挙げられます。

 これらの特徴を踏まえ、相続放棄は、相続放棄に強い弁護士に依頼することが大切といえます。

 以下、詳しく説明します。

 

2 申述期限が短いことについて

 相続放棄の期限が、相続の開始を知った日から3か月以内ということについては、専門家でない方にとっては、あまり一般的でことではないかと思われます。

 そのため、相続放棄をしようと思い立った時には、期限が迫ってしまっているということもあります。

 相続放棄をするためには、相続放棄申述書を作成することに加え、戸籍謄本類の収集をしなければなりません。

 通常、これには一定の時間を要します。

 そうこうしているうちに、相続放棄の期限が過ぎてしまう可能性もあります。

 資料が揃っていない場合であっても、家庭裁判所に、何とか受付だけはしてもらい、期限に間に合うように取り扱ってもらうことができる可能性もあります。

 そのためには、家庭裁判所との調整や、説明資料等の用意が必要になることがあります。

 相続放棄に強い弁護士であれば、このような例外的なケースについてのノウハウを持ち合わせていることが多いため、相続放棄が認められる可能性が高まります。

 

3 被相続人の死亡から3か月以上が経過しているケースについて

 相続放棄は、相続の開始(すなわち被相続人の死亡)を知った日から3か月以内に行えばよいとされています。

 つまり、仮に被相続人の死亡日から10年以上が経過していたとしても、つい最近被相続人の死亡を知ったのであれば、その日から3か月以内に相続放棄の手続きをすればよいということになります。

 もっとも、一般的には、相続人は、被相続人の死亡日またはその数日後程度に、被相続人の死亡を知ると考えられています。

 そのため、相続放棄の申述を起こった日が、被相続人の死亡日から3か月以上経過している場合、裁判所に対して事情説明が必要になります。

 具体的には、被相続人の死亡日と被相続人の死亡を知った日が大きく異なっている理由と、その間被相続人の死亡を知ることが困難であった事情です。

 これらを的確に説明し、家庭裁判所に納得してもらえないと、相続放棄が認められなくなることがあります。

 そのため、相続放棄に強い弁護士に依頼することが大切です。

相続放棄のメリット・デメリット

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月29日

1 相続放棄をした場合の効果

 相続放棄は、はじめから相続人ではなかったことになるという法的効果を有します。

 感覚的に申しますと、生物学的には親子や兄弟姉妹であっても、法律上は相続関係がない他人になるという効果があります。

 これは非常に強力な効果です。

 また、相続放棄は、一度行ってしまうと、極めて厳格な要件のもとでしか取り消すことができません。

 そのため、メリットとデメリットをしっかり考えたうえで、相続放棄をするか否かを決定することが大切です。

 

2 相続放棄のメリット

 相続人ではなかったことになるという効果から、実務上の相続放棄の最も大きなメリットは、相続債務の負担を免れることにあります。

 相続放棄の効果は絶大であり、被相続人が貸金業者等から借金をしていた場合はもちろんですが、自己破産をしても免責されない租税債務や損害賠償債務なども免れることができます。

 実際、被相続人が税金の滞納をしていて、市役所等からの連絡によって被相続人の死亡をはじめて知ったという相続人の方も多いです。

 次に大きいメリットとして、相続関係から離脱できることが挙げられます。

 他の相続人と関係が悪かったり、大きなトラブルを生む相続人がいたりする場合、相続放棄をしてしまえば、一切かかわらずに済みます。

 そのほか、特定の相続人に相続財産、相続債務を集約する際にも相続放棄は有用です。

 

3 相続放棄のデメリット

 最も大きなデメリットは、相続財産を取得することができなくなることです。

 特に、相続放棄をした後になって相続財産が発見された場合、もはやそれを得ることはできません。

 もっとも、被相続人が消費者金融やクレジットカード会社から借金をしていた場合や、税金の滞納をしていた場合、生活保護受給者であった場合などは、一般的には相続財産になり得るものは極めて少ないため、相続放棄をしてしまうことが多いです。

 被相続人が不動産を所有していた場合にも注意が必要です。

 相続人全員が相続放棄をし、相続人が不在となった場合、相続財産であった不動産の保存義務が残ります。

 相続放棄をしていなければ売却や建物の取壊しができますが、相続放棄をしてしまうとこれらはできません。

 保存義務から脱するためには、家庭裁判所に対し、相続財産清算人選任申立てを行いますが、100万円程度の予納金が必要になることがあります。

相続放棄での弁護士の選び方

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月26日

1 相続放棄手続きの特徴

 狭い意味での相続放棄、すなわち家庭裁判所に対して相続放棄に必要な書類を提出するという意味においては、特殊なケースを除いて、それほど難しくはありません。

 もっとも、家庭裁判所に対して行う相続放棄手続きに伴って発生する諸々の問題への対応は、法律が確立していない面も多く、簡単にはできません。

 対応を間違えてしまうと、相続放棄自体ができなくなってしまったり、無効となってしまったりするおそれもあります。

 そのため、相続放棄を弁護士に依頼する場合は、相続放棄を取り巻く諸問題も含めて対応ができる弁護士を選ぶ必要があります。

 

2 弁護士の専門性

 弁護士が取り扱う分野は、細かく分けていけば、無数といえるほどに存在します。

 そのため、あらゆる分野に精通するということは事実上困難です。

 このことから、弁護士にも得意分野とそうでない分野が存在します。

 相続放棄も例外ではありません。

 相続放棄は、相続という大きな分野の中の、細分化されたマイナーな分野であることから、精通している専門家は多くはないと考えられます。

 特に、先述の通り、相続放棄を取り巻く諸問題については、確立されていない部分が多く、対処した経験を持つ弁護士は比較的少ないとも考えられます。

 

3 弁護士の選び方

 以上のことから、相続放棄は相続放棄に精通した弁護士に依頼するべきであるといえます。

 精通しているかどうかの見分け方がいくつかあります。

 まず、初回の相談時において、手続きの進行について細かく説明できるかどうかを確認します。

 相続放棄は、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出した後も、いくつかの手続きが存在します。

 このことをしっかり説明できるかを確認しましょう。

 また、被相続人の財産の取り扱いについても、細かく質問をするのも手です。

 大雑把に、一切手を付けないでくださいという回答しかしない専門家もいますが、それでは解決にならないこともあります。

 それぞれの財産の特性に応じて取り扱いを説明できる弁護士であるかを確認するとよいかと思います。

相続放棄の流れ

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月19日

1 書類収集、作成

 まずは、相続放棄の手続きに必要な書類の収集と作成が必要になります。

 主な必要書類として、以下のものが挙げられます。

 ・被相続人の死亡の記載のある戸籍

 ・申述人の現在の戸籍

 ・被相続人の住民票除票または戸籍の附票

 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(親が子の相続放棄をする場合、兄弟姉妹の相続放棄をする場合)

 ・相続の開始を知った日が被相続人死亡日と異なる場合は、そのことを客観的に示せる書類(債権者からの催告書など)

 ・相続放棄申述書

 弁護士に依頼する場合には、裁判所に代理権の存在を示すための委任状も作成する必要があります。

 

2 裁判所への書類提出とその後

 書類が揃いましたら、管轄の家庭裁判所に提出します。

 提出先となる管轄の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所です。

 被相続人の住民票除票または戸籍の附票は、このために必要となります。

 提出は、直接裁判所に持ち込むか、郵送で行います。

 相続放棄は、期限が極めて厳格な手続きですので、郵送の場合には追跡を行い、裁判所に到達していることを確認しておくと安心です。

 その後、裁判所において、相続放棄申述書の審査が開始されます。

 不明な点等がある場合には、裁判所から連絡が来ることがありますので、対応する必要があります。

 また、裁判所によっては、相続放棄の手続きが申述人の真意に基づくものであるかを確認するため、申述人ご本人様宛てに質問状を送ることもあります。

 事案が非常に複雑な場合は、裁判所から呼び出しを受け、審問が行われることもあります。

 その結果、家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書という書類が交付されます。

 これを以て、相続放棄の手続きは終了となります。

 被相続人が借金をしていたり、税金等の滞納があった場合には、各債権者に対して、相続放棄をしたことを伝え、相続放棄申述受理通知書の写しを提供することもあります。

 こうすることにより、今後相続人として債務の弁済が求められることがなくなります。

弁護士法人心での相続放棄のご相談の流れ

文責:伊藤貴陽 所長 弁護士

最終更新日:2024年02月22日

1 まずはフリーダイヤルへお電話ください

 被相続人の方がお亡くなりになられ、被相続人に借金がある(可能性がある)、被相続人や他の相続人と疎遠または不仲であるため相続に関わりたくないなど、少しでも相続放棄をした方が良いかもしれないと感じましたら、まずは弁護士法人心のフリーダイヤルで、お気軽にお問い合わせください。

 相続放棄をするかどうか悩んでいる段階でのご相談も承りますし、分からないことがあるので聞いてみたいというだけでも問題ありません。

 

2 相続放棄担当の弁護士によるヒアリング

 フリーダイヤルにお電話をいただきますと、まずは相談者様の置かれている状況について、被相続人の財産状況や、相続関係等につき、大まかなヒアリングをさせていただきます。

 このヒアリング情報を元に、後ほど、相続放棄担当の弁護士から、相談者様へ電話連絡を差し上げます。

 そして、弁護士より、相談者様の置かれている問題の解決に向け、より具体的かつ詳細なご事情をヒアリングさせていただきます。

 

3 電話相談と来所相談

 相続放棄は、複雑な事案や期限がひっ迫した事案でなければ、お電話のみで相談を完結することもできます。

 弁護士法人心の事務所から遠いところにお住まいでも、対応させていただきます。

 そして、相続放棄をご依頼いただく際には、依頼者様のご住所を伺わせていただき、郵送にて契約書等のやり取りができます。

 相続放棄のために必要な資料を、並行してメールやFAX、郵送等でお送りいただくこともあります。

 ご来所をご希望の場合や、面談にて資料を確認させていただきたい場合等は、弁護士法人心の事務所での面談を承りますので、お気軽にご希望をお伝えください。

 また、身体的事情等によりご来所が困難な場合、出張させていただくことも可能です(出張費が必要になることもあります)。

被相続人が5年以上前に亡くなっている場合は特別な対応が必要

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年01月31日

1 被相続人が5年以上前に亡くなっている場合の相続放棄

 相続放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に行う手続きです。

 多くの場合、被相続人死亡日や、その数日後以内くらいに相続の開始を知りますので、相続放棄は被相続人死亡日から3か月以内に行われることがほとんどです。

 もっとも、あくまでも相続放棄は相続の開始を「知った」日から3か月以内に行えばよいので、たとえ被相続人が死亡していたとしても、そのことを数年後に知ったのであれば、その死亡を知った日から3か月以内に相続放棄手続きをとればよいということになります。

 実際に、被相続人が死亡してから5年以上経過してから、被相続人に借金があることが発覚し、相続放棄をしなければならないというケースもあります。

 この場合においても、債権者からの手紙などによって、借金の存在を知った日から3か月以内に相続放棄手続きをすればよいのです。

 

2 相続放棄の際の書類に注意が必要

⑴ 住民票除票または戸籍の附票が取得できないケースがある

 法律上、被相続人死亡からどれだけ時間が経っていても、相続の開始を知った日から3か月以内であれば、相続放棄をすることはできます。

 しかし、実務上、被相続人死亡から5年以上経過している場合には、相続放棄に必要な書類を収集する作業において、大きな問題が生じます。

 相続放棄の手続きに必要な書類の一つに、住民票除票または戸籍の附票があります。

 住民票除票または戸籍の附票は、被相続人の最後の住所地が記載されている書面です。

 相続放棄の手続きを行う裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所であるため、被相続人の最後の住所地を示す書類として、提出が必要です。

 ところが、住民票除票または戸籍の附票は、被相続人死亡から5年経過すると処分されることがあります。

 そうすると、住民票除票または戸籍の附票は取得できません。

 このような場合は、死亡届の記載事項証明書という特殊な書類を取得する必要があります。

⑵ 死亡届の記載事項証明書について

 死亡届の記載事項証明書は、市町村等ではなく、被相続人の本籍地を管轄する法務局で発行を受けます。

 もっとも、死亡届の記載事項証明書の発行を受けるには、その理由を裏付ける資料が必要となります。

 相続放棄をしたいが、住民票除票または戸籍の附票が手に入らないという事情は、死亡届の記載事項証明書の発行を受けることができる理由にあたります。

 しかし、これを裏付けるためには、いったん裁判所から事務連絡という書面を発行してもらう必要があります。

 実務上は、まず被相続人の死亡地を管轄する裁判所に相続放棄申述書一式を提出し、住民票除票または戸籍の附票が手に入らない事情を説明したうえで、事務連絡を発行してもらうという流れになります。

 死亡届の記載事項証明書が手に入ったら、改めて裁判所へ提出することで、相続放棄の手続きが進行します。

相続放棄も事前準備ができる

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年01月30日

1 相続放棄ができるタイミング

 結論から申し上げますと、相続放棄は被相続人となる方がご存命のうちに行うことはできません。

 相続放棄は、「相続の開始を知った日」から3か月以内に行うとされています。

 相続の開始があったことが要件となります。

 相続は、被相続人の死亡によって開始されます。

 そのため、相続放棄は被相続人が死亡してからでないと行えないことになります。

 

 亡くなりそうな親御様がいて、かつその親御様に債務があることが判明しているというケースはよくあります。

 このような場合、できることなら今すぐ相続放棄をしてしまいたいと思うものですが、相続放棄をすることができないのが現状です。

 

2 事前に準備できることはある

 相続放棄をする上で、被相続人の財産がネックになることがあります。

 相続放棄は、はじめから相続人ではなくなる手続きですので、被相続人の債務を負わずに済むという効果があると同時に、被相続人の財産を取得することができません。

 ところが、放棄時に相続財産を占有している場合には、相続財産の保存義務だけが残ることがあります。

 預貯金等の金銭債権はあまり問題になりませんが、不動産(建物)と自動車はとても厄介です。

 これらは、相続放棄をする場合、処分することができません。

 処分をしてしまうと法定単純承認事由に該当してしまい、相続放棄が認められなくなる可能性があります。

 一方で、老朽化により倒壊したり、オイルが漏れたりすることで、近隣に損害をもたらす可能性があり、何らかの形で責任追及がなされる可能性があります。

 そのため、放棄時に相続財産を占有していた場合には、次順位の相続人または相続財産清算人選任の申立てをするまで、保存義務を負い続けることになります。

 そこで、可能な限り、被相続人となる方がお亡くなりになる前に、本人の承諾を得て財産を整理、処分することが大切です。

 特に、建物の取壊しや自動車の廃車手続きができればベストです。

 売却することも可能ですが、被相続人となる方に債務がある場合、債権者から詐害行為取消権を行使される可能性もあるため、注意が必要です。

被相続人死亡日から3か月以上経過している場合の相続放棄

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月14日

1 相続放棄の申述の期限について

 相続放棄の期限は、「相続の開始を知った日」から3か月となります。

 相続の開始を知った日とは、被相続人が死亡したことと、ご自身がその相続人であることの両方を知った日となります。

 このことからすると、被相続人が3か月以上前に死亡したことを知っていたとしても、自身が相続人であることを知らなければ、理論上は相続放棄の期限は過ぎていないことになります。

 もっとも、一般論として、被相続人が死亡したこと及び自身が相続人であることは、被相続人死亡日またはその日から数日後程度で知ると考えられます。

 そのため、相続放棄は、被相続人死亡日から3か月以内に行うことが、事実上の原則となっています。

 

2 被相続人死亡から3か月以上経過後に相続放棄をする場合

 上記のとおり、被相続人死亡から3か月以上経過していたとしても、相続の開始を知ってから3か月以内であれば、相続放棄はできます。

 しかし、この場合は、被相続人死亡を知るのが遅れた理由等を、裁判所に対してしっかりと説明する必要があります。

 実際に、被相続人死亡から3か月以上経過後に相続放棄をするようなケースはよくあります。

 典型的なケースとして、数十年も前に両親が離婚していて、離婚後は没交渉となっていた方の親が亡くなったため、死亡後しばらくたってから市役所や債権者から親が亡くなったことを知らされるというものがあります。

 このケースにおいては、相続放棄申述書において、次の2点を説明するとともに、疎明資料を付けます。

 まず、被相続人死亡を知った日を説明します。

 市役所や債権者から送付されてきた書面等を読んだ日が、これにあたります。

 市役所や債権者からの書面には、通常日付が入っていますので、この日付に準じます。

 このとき、市役所や債権者からの書面のコピーも提出します。

 次に、市役所や債権者からの書面を読むまで、被相続人が死亡したことを知ることができなかった理由を説明します。

 これについては、両親が数十年前に離婚して以来、被相続人とは一切連絡を取っていなかったという旨を説明するとともに、戸籍謄本類を用いて、ご両親が数十年前に離婚していることを示します。

遺産分割協議中に相続放棄をしたいと考えられた方へ

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月13日

1 遺産分割協議と相続放棄の関係

 遺産分割協議は、相続財産を相続する意思の現れと考えられているため、遺産分割協議を成立させてしまった場合、法定単純承認事由に該当する行為となり、原則として相続放棄をすることができなくなります。

 一方、未だ遺産分割協議中であり、協議が成立していない状態であれば、原則として法定単純承認事由に該当する行為がない限りは、相続放棄をすることができます。

 

2 遺産分割協議中の相続放棄

 遺産分割協議を開始した後に相続放棄を検討せざるを得なくなるケースは、主に次の2つです。

① 相続財産を上回る相続債務の存在が判明したケース

 遺産分割協議はその前提として相続財産の調査を行うことから、その過程で多額の相続債務が判明することがあります。

 特に被相続人が事業を営んでいたような場合、複数の金融機関や貸金業者から事業用の借入を行っていることがあるため、遺品の中にある契約書の調査や信用情報の調査を行わないと、正確な債務額が判明しないことがあります。

 法人の代表者であった場合は、法人の保証人になっていることもあり、さらに複雑になります。

 相続財産よりも相続債務の方が多く、相続することに経済的合理性がないことが確定した場合には、相続放棄をするという選択肢を選ぶことができます。

 もっとも、相続の開始を知った時から3か月以内に、財産調査の結果が判明しないこともありますので、相続債務の存在が予期される場合は、予め申述期限の延期をしておくという方法をとることもできます。

② 問題のある相続人とトラブルになり相続関係から離脱する必要が発生したケース

 相続放棄によって相続関係から外れることで、問題のある相続人からの攻撃が止まるケースもあるため、このような場合に相続放棄はとても有効な手段となります。

 また、後になって相続債務に関する何らかの負担を求められても、相続放棄をした場合は法的にはじめから相続人でなかったことになるので、一切関与しえないという反論ができます。

被相続人の借金の取立てに不安を感じている方へ

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月08日

1 借金の取立て

 被相続人が貸金業者や金融機関等から借金等をしていた場合、当該貸金業者・金融機関や債権回収の委託を受けた業者または代理人から、支払いを要求する書面または電話での連絡が入ることがあります。

 貸金業者や金融機関は、債務者である被相続人が亡くなったことを知らない場合も多く、宛先が被相続人名義のまま請求書を送付してくることもよくあります。

 もちろん、被相続人が亡くなったことを知り、相続人の住所等を調べ、相続人宛に請求をすることもあります。

 被相続人が死亡してから時間が経過している場合には、相続人の調査を終え、相続人宛に請求をするというケースが増えます。

 

2 相続放棄を行う場合の債権者への対応

 貸金業者や金融機関に直接連絡を取るのは、とても怖いと思います。

 貸金業者や金融機関からの連絡に対して、電話に出ない、書面に返信しないという形で、全く対応をしないこともできます。

 しかし、完全に無反応を決め込みますと、相手も本気になり、場合によっては訴訟等を起こされる可能性もあります。

 そこで、一回だけ連絡を取り、相続放棄の手続中である旨だけを伝えることが得策です。

 相続放棄を弁護士に依頼するのであれば、相続放棄について弁護士に相談しているということを伝えるのも効果的です。

 そして、弁護士に依頼した後は、代理人である弁護士から相手に対して、これから相続放棄を行う旨、および相続放棄を終えたら相続放棄申述受理通知書の写しを提供する旨の一報をしてもらうのも手です。

 貸金業者や金融機関もプロですので、相続放棄は極めて強力な手続きであり、法定単純承認事由が存在する場合でなければ、債権の回収はほぼ不可能であることを十分に知っています。

 そのため、弁護士が相続放棄の手続きに着手していることを伝えれば、基本的には手続きが完了するまで請求は行わないことが多いです。

 債権者からの借金の取立ての不安に悩まされないためにも、相続放棄をお考えの際はお早めに弁護士へご相談ください。

相続放棄は法律で決められた方法で行う必要がある

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年01月29日

1 相続放棄の手続き

 相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3か月以内に、必要な書類を収集・作成し、管轄の裁判所へ提出することで開始されます。

 手続きの方法や時期は決められており、これ以外の方法で行うことはできません。

 3で詳しく説明をしますが、相続人同士で相続を放棄する旨の合意が取れていたとしても、それは事実上の相続放棄と呼ばれ、法律上の相続放棄とはならないのです。

 

2 相続放棄を生前に行うことはできない

 意外と知られていないと感じることが多いのですが、相続放棄は、被相続人がご存命のうちに行うことはできません。

 補足をしますと、遺留分の放棄は生前に可能ですが、裁判所の許可が必要であり、要件も厳格です。

 被相続人がご存命のうちにはできないにもかかわらず、相続の開始を知った日から3か月以内に行わなければならないため、時間的には非常にシビアな手続きであるといえます。

 そのため、被相続人が存命のうちから相続放棄を検討しているのであれば、予め準備をしておくことはとても効果的です。

 相続放棄をするにあたって、行ってもよいこと、行ってはならないことを事前に調査したり、残置物となり得る家財道具などを被相続人の了解を得て処分したりしておけば、法定単純承認事由に該当する行為を行ってしまうリスクを軽減できます。

 

3 他の相続人に相続を放棄すると伝えても相続放棄ではない

 被相続人がお亡くなりになり、他の相続人に対して相続放棄をする旨を伝えたり、何も相続しない旨の遺産分割協議を行ったりしても、法律上の相続放棄にはなりません。

 このような方法を「事実上の相続放棄」と呼ぶことはあります。

 1で述べた通り、法律上の相続放棄はその手続方法が決められており、管轄家庭裁判所に相続放棄申述書と戸籍謄本類等の付属書類を提出し、裁判所が相続放棄を認めて受理することではじめて成立します。

 法律上の相続放棄と、事実上の相続放棄との一番の違いは、相続債務を負うか否かです。

 法律上の相続放棄は、初めから法的に相続人でなかったことになりますので、被相続人の負債を負うことはありません。

 他方、事実上の相続放棄は、相続人間においては相続債務を負わない旨を定めたとしても、債権者に対しては対抗できません。

 可分債権である金銭債権は、相続開始と同時に法定相続割合に応じて分割されますので、別途免責的債務引受契約等を締結し、他の相続人に債務を移さない限り、相続債務を弁済する義務を負います。

相続放棄をすべきかお悩みの方へ

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年01月31日

1 相続放棄の理由・動機で代表的なもの

 どのような時に相続放棄をすべきなのだろうか、自分の場合は相続放棄をしたほうがよいのだろうかとお悩みの方もいらっしゃるかと思います。

 相続放棄をご検討される方の理由としては、債務超過、生前贈与を受けている、遺産を特定の相続人に集中させたい、相続に関わりたくない等がよく挙げられます。

 ご自身のご事情に該当するものがありましたら、一度相続放棄をご検討いただくのも良いかもしれません。

以下、それぞれについて詳しくみていきます。

 

2 債務超過

 被相続人が生前に債務を抱えており、その金額が保有している資産の額を超えているような場合です。

 多くの場合、資産と呼べるものはほとんどなく、借金のみが存在するという状態です。

 クレジットカード会社や消費者金融に対する借入が典型ですが、税金を滞納していた、生活保護費の不正受給により返還請求を受けていた、知人の連帯保証人になっていたというケースもあります。

 また、負債の状況が明確ではなく、被相続人が誰に対しどのくらいの負債を抱えているのかが不明な場合、いつどんな請求をされるか分からないという「多額の負債を有しているおそれ」も相続放棄の理由となります。

むしろ、債務超過を理由とした相続放棄の大半は、この動機によるものです。

 

3 生前贈与を受けている

生前に多額の贈与を受けている場合、他の相続人との公平性を確保するために、相続放棄をするということがあります。

 

4 遺産を特定の相続人に集中させる

 先祖代々の土地を分散させないため等の理由で、家業を継ぐ相続人に負債も含めた全ての財産を集中させるという考えのもと、他の相続人全員が相続放棄をするということがあります。

 遺産分割協議でも似た効果を発生させることはできます。

 しかし、相続放棄と異なり、相続人全員による遺産分割協議書への署名押印を得るまで確定しないということと、債務がある場合に免責的債務引受契約をしなければならないというデメリットがあります。

 

5 相続に関わりたくない

 トラブルメーカーの相続人がおり関わり合いたくない場合や、被相続人とは没交渉のまま長年離れた場所で暮らしているため相続する気がない場合などにも、相続放棄を行うケースがあります。

 

6 相続放棄のお悩みは弁護士法人心へ

 上記でご紹介したようなご事情から相続放棄をしたいとお考えの方、または別のご事情を抱え、相続放棄をすべきか相談したいという方は、当法人心までご連絡ください。

 相続放棄の案件を得意としている弁護士が、相談者の方のご事情やご意向を踏まえた上で、より良い解決方法をご提案させていただきます。

被相続人が借金を抱えていた場合の相続放棄について

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年02月06日

1 まず債権者と借金の概算金額を調べる

 被相続人がクレジットカード会社や消費者金融、銀行などからお金を借りていた場合、これらの借金も相続財産となるため、相続放棄をしない限り、相続人が返済義務を負います。

 これを免れるためには相続放棄をする必要があります。

 そこでまず、被相続人がどの債権者に対して、いくらの借金を有していたのかを調べます。

 最も簡易な方法は、被相続人に対する郵便物等を調べ、債権者からの支払いの催促などがないかを確認する方法です。

 これが見つかれば、債権者や被相続人の死亡日に近い日付の残債額がわかります。

 手掛かりがない場合には、CICやJICCなどの信用情報機関へ問い合わせをします。

 

2 債権者と借金の金額がわかったら

 被相続人の債権者と借金の金額が判明したら、その情報をまとめておきます。

 これは、相続放棄が終わった後に、相続放棄をした旨の連絡をするためです。

 通常、被相続人がお亡くなりなると、支払いは止まりますので、債権者は支払い催促のための手紙を送ってきたり、電話をかけてきたりすることがあります。

 連絡を全くしないのも手ではありますが、債権者によっては相続人を相手に裁判を提起することもあり得ます。

 そのため、放っておくよりは、専門家を通じてでも問題はありませんので、相続放棄を検討している旨を伝えた方がよいです。

 債権者側が被相続人死亡の事実を知らない場合は、被相続人の名義で書面等が送られてきます。

 この場合には、まず被相続人が死亡した旨を伝えた上で、相続人は相続放棄を検討していることも伝えます。

 

3 相続放棄が終わったら

 相続放棄が完了すると、相続放棄申述受理通知書が裁判所から交付されます。

 この相続放棄申述受理通知書の写しを債権者に渡します。

 債権者は、相続放棄申述書の写しの提供を受けることで、当該相続人からの回収不可能と判断しますので、その後の請求は止まります。

 しかし債権者へ直接連絡をすることはとても怖いという方もいらっしゃいます。

 当法人では、相続放棄に関する手続きが終わったら、債権者へ連絡をして、相続放棄申述受理通知書の写しを提供し、以降の請求が起きないようにする等の対応も行っております。

 被相続人が借金を抱えていたことが判明し、債権者への対応にお悩みの方は、お早めに当法人へご相談ください。

相続放棄の検討段階で気を付けること

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年01月15日

1 とにかく相続財産の処分をしない

 相続放棄を検討している段階において、一番気を付けなければならないのは、相続財産の処分をしないということです。

 財産を処分してしまうと、法定単純承認事由に該当する行為とみなされ、原則として相続放棄が認められなくなります。

 

2 処分とは何か

 もっとも、法定単純承認事由に関する法律の条文には「処分」としか書いておらず、具体的に何が処分にあたるかについては、明確になっていません。

 まず、不動産の名義変更をして売り払ったり、預貯金の払い戻しを受けて自分のために費消したりすることは、処分の典型にあたりますので、行ってはならないといえます。

 では、普通に考えればゴミとしか思えないような残置物を処分したり、亡くなった人の携帯電話の解約をしたり、公的な支給金を取得したり、被相続人の宛ての請求の支払い等についてはどうなるのでしょうか。

 これらについては、通説、実務上は法定単純承認事由とならないケースもありますが、明確に条文や判例において認められているわけではないので、非常に悩ましいと言わざるを得ません。

 最終的には、実際にご自身が行おうとしている行為が、本当に法定単純承認事由に該当するかどうかは、ケースバイケースで判断せざるを得ないのが現状です。

 そのため、相続放棄に詳しい弁護士にまずはご相談されることをおすすめします。

 

3 実際に処分について悩んだ場合の対策

 相続放棄の可能性があるならば、相続財産については、とにかく余分なことをしないという意識を持つことが一番重要です。

 極論すれば、被相続人がお亡くなりになったことを知った際でも、賃借権なども含め被相続人の財産については、とりあえず何もしないようにするのが一番安全です。

 さらに言えば、被相続人がご存命のうちから、相続放棄制度について理解し、うっかり法定単純承認に該当しそうな行為を行ってしまわないように予備知識を入れておくことが大切です。

 疎遠な音信不通の親族がいる場合にも、同じことが言えます。

 当該親族が亡くなると、突然債権者を名乗る人や会社から、借金や滞納家賃等の請求が来ることもあります。

 そのような時に、相続放棄の予備知識がないと、焦って請求に応じてしまい、法定単純承認事由に該当する行為を行ってしまう可能性もあります。

 現実には、相続放棄のご相談をいただいた時点において、すでに法定単純承認事由に該当する可能性のある行為を行ってしまっているケースも多いです。

 そのような場合であっても、事情を詳しくお聞かせいただき、法律構成の仕方によっては、相続放棄が認められるようにできることもあります。

 柏近郊にお住まいの方で、相続放棄についてお悩みの際は、お早めに、そしてお気軽に当法人までお問い合わせください。

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相続放棄は弁護士に相談

相続放棄とは,相続する権利を放棄し,相続財産を一切受け継がない手続きです。
借金などのマイナスの財産を相続したくないという方は,相続放棄をすることで借金返済の義務を背負わなくてすみます。
相続放棄を行うと,土地や預貯金のようなプラスの財産も放棄することになりますので,一部の財産だけ相続したいなどとお考えの場合は注意が必要です。
また,相続放棄の手続きには3か月の期限がありますので,この期限内に必要書類を用意し,家庭裁判所へ申述書を提出しなければいけません。
相続放棄に詳しい方や手続きに慣れているという方は少ないかと思います。
大半の方は,相続放棄に関する情報を集めながら,相続放棄の手続きを進めていくことになるのではないでしょうか。
それを3か月という期限内で行うとなると負担が大きいかと思いますし,万が一誤りがありますと,相続放棄ができなくなってしまうおそれがあります。
相続放棄が行える期限がせまり,焦って手続きを進めてしまい後悔してしまう方もいらっしゃるかもしれません。
「相続放棄の手続きを適切かつスムーズに進めたい」「相続放棄をする必要があるのか知りたい」というような相続放棄に関する様々なお悩みに対し,弁護士が丁寧に相談にのらせていただきますので,まずは弁護士法人心をご利用ください。
相続人や相続財産は一人ひとり異なりますので,ご相談内容をしっかりとお伺いし,個々の状況に応じた適切な対応をさせていただきます。
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