相続放棄をした場合に固定資産税の支払いはどうなるか

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年03月29日

1 固定資産税

 固定資産税は、1月1日時点で固定資産(一般的には土地や建物)を所有していた人に課される税金です。

参考リンク:総務省・固定資産税

 税金は、支払わなければならない金銭という点では、債務の一種です。

 広い意味では、家賃や、物を買った時の代金と同じです。

2 相続と固定資産税の関係

 未払いの固定資産税があった場合、未払い部分は相続の対象となります。

 本来的には、相続人が支払う義務を負います。

 被相続人がお亡くなりになられた次の年の1月1日においては、すでに被相続人の固定資産は相続人の所有となっているため、固定資産税は相続人に直接課されることになります。

3 相続放棄をした場合

 相続放棄は、はじめから相続人ではなかったことになる、という法的な効果があります。

 この効果があるため、被相続人の財産を取得することができなくなる代わりに、債務も一切負担しないで済むのです。

 被相続人がお亡くなりになられた年の1月1日時点で被相続人に課せられていた固定資産税のうち、未払いのものについては、相続放棄をした元相続人は支払いの義務を免れます。

 では、その次の年に課せられる固定資産税はどうでしょうか。

 相続放棄をした場合、相続人ではなくなることから、被相続人の固定資産も取得できなくなります。

 つまり、被相続人の固定資産の所有権や共有持分権を、はじめから持っていなかったことになります。

 そのため、固定資産税を課せられるということはなくなります。

 なお、固定資産税の請求がきっかけとなり、相続の開始を知るというケースや、相続債務が存在していたことを知るというケースがあります。

 疎遠で音信不通となっていた被相続人が、固定資産を所有したまま亡くなった場合、自治体が相続人を調査して固定資産税の支払を求めるためです。

 このケースにおいては、固定資産税の請求によって、被相続人が死亡したこと(相続が開始したこと)を知ることになりますので、固定資産税の請求を知った日から3か月以内に相続放棄の手続きを行うことで、固定資産税の支払を免れることができます。

 例外として、相続放棄をした後であっても、固定資産課税台帳に登録されてしまっている場合は、納税義務を負うケースがありますので、注意が必要です。

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