相続放棄のやり方

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年04月03日

1 法律上の相続放棄

 一般用語として用いられる相続放棄には、2つの意味があります。

 ひとつは、事実上の相続放棄と呼ばれるものです。

 これは、遺産分割協議の際、単に一切遺産を取得しない意思を示すものです。

 遺産は取得できませんが、被相続人の負債は法定相続割合に基づいて負担し得るという特徴があります。

 もうひとつは、法律上の相続放棄と呼ばれるものです。

 これは、家庭裁判所に対して、相続放棄申述書と付属書類を提出し、相続放棄をする旨を示すものです。

参考リンク:裁判所・相続の放棄の申述

 この手続きにより、相続放棄が受理されると、申述した人ははじめから相続人ではなかったことになります。

 遺産を一切取得できないという点では事実上の相続放棄と変わりませんが、被相続人の負債も一切負担せずに済むという特徴があります。

 今回は、後者の法律上の相続放棄について扱います。

2 相続放棄手続き

 法律上の相続放棄の手続きの進め方は次の通りです。

 まず、相続放棄に必要な書類の作成と収集です。

 相続放棄申述書という書類に、被相続人、申述人の本籍地等や、相続放棄の理由などの必要事項を記入します。

 付属書類として、被相続人、申述人の戸籍謄本類を収集します。

 事案によっては、債権者からの通知書なども収集します。

 これらの書類が揃ったら、家庭裁判所に提出します。

 相続放棄の書類の提出先となる家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所です。

 被相続人の最後の住所地は、住民票除票または戸籍の附票で確認できます。

 提出後、家庭裁判所によっては、質問状を送付してくることがあります。

 代理人弁護士がついている場合、代理人に対して質問状が送付されることもあります。

 質問状には、相続放棄が申述人の真意に基づくものであるか否か、及び法定単純承認事由となる行為をしていないか否かを確認する質問が記載されることが多いです。

 これらの質問に回答し、裁判所へ質問状を返送します。

相続放棄における裁判所からの質問状対応についてはこちらをご覧ください。

 その後、家庭裁判所が特に問題ないと判断した場合、相続放棄が受理され、相続放棄申述受理通知書という書類が交付されます。

 これにより、相続放棄の手続きは終了します。

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